起業について、ウォーゲームから教えてもらったこと
ぼくの仕事はIT関連業務を行っている。
まだ法人化はしておらず、働くのはぼくひとり… 零細の個人事業主だ。
かつては会社員として、プログラマそしてシステムエンジニアとして働いてた。
時には修羅場に身を置いたり、心身ともに害したこともある。
様々な現場に派遣され、かつ会社を転々とした。
フリーになると決めた時、怖さはあった。
でも、不思議と使命感のような「やらねば」という気持ちがあった。
──自分の理想を実現させたいなら、自分で行動するしかないのだから、と。
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1980年代の前半から中ぐらいまで「ウォーゲーム」と呼ばれるボードゲームのブームがあった。一般には「シミュレーションゲーム」といって複雑なルールや図表を用いてプレイするゲームである。
囲碁や将棋とは真逆のゲームと言っていい。
だが、現在見かけるコンピュータゲームの源流のひとつでもある。
最大手はアバロンヒル社で、数多くのボード・シミュレーションゲーム(ウォーゲーム)を販売していた。第2次大戦ものをはじめ、ナポレオン戦争、南北戦争、その他いろいろなテーマがあった。
だが、必ずしもみな満足できるとは限らなかった。
「こういうテーマのこういうゲームが出て欲しい」という要望は増えるばかりだった。
そうこうするうちに、独自にシミュレーションゲームを開発する会社がいくつか現れた。ジェームズ・F・ダニガン氏によるSPI社もそのひとつである。
ダニガン氏による「ウォーゲーム・ハンドブック」は1982年ホビージャパン社から日本語版が出版された。
当時中学生だったぼくはお小遣いをはたいて購入し、むさぼるように読んだ。
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現在では資料的価値しかないかもしれない。
コンピュータゲームに関する記述などは骨董的な価値すらないと言っていい。
でも、ウォーゲームとは何か、何をもって「シミュレーション」と言わしめるかを本格的に解説した本なのだ。
付録のミニゲーム「メッツ攻略作戦」のゲームデザインを通して、リサーチやゲーム開発についても述べている。
たかがゲームというなかれ、というわけだ。
当時中学生のぼくが、この本を読んで不思議と心に残った部分があった。
ダニガン氏がSPI社設立時を語った、この一節である。
設立そのものは、やや行き当たりばったりの感がなくもない──昔の30年代の映画で、いたずらっ子たちが集まって「ねえみんな、パパのガレージでブロードウェイのミュージカルを演ろうよ!」というのがあったが、われわれが1969年にやったことも、あれとそっくりだったのだ。資金はなかったが、情熱だけはたっぷりあり、アイデアもあった。
(193ページより引用)
…月日は流れ、ぼくはとある会社で働いていた。
雇用条件も、職場の環境も、給料も、八方塞がりでいらだつばかりの毎日だった。
そんなある日、ふと思い立ったのだ。
「いっそ、自分で会社を興したほうがいいじゃないか」と。
もちろん、ぼくの脳裏をよぎったのは、さきほどの一節だ。
ウォーゲームハンドブックを読んでから、およそ25年後のことである。
知らず知らずのうちに、ぼくは起業することを学んでいたのかもしれない。
そして「人はみずからふさわしいものを得る」とも。