ゲーマーの誕生
時は1977年夏ごろ、と記憶している。
詳しい状況は覚えていないが、とあるホテルのロビーの片隅で、数名の若い大人たちが何かを囲んでわいわいやっていた。
子どもだったぼくは、なかなかその正体を見ることはできず、ぴょんぴょん飛び跳ねるようにして、大人たちが何をしているかを覗いてみた。
それは、世界初のアーケードゲーム「ブレイクアウト」。
いわゆる「ブロックくずし」だ。
ぼくはすっかりそれに惹きつけられてしまった。
「コンピュータでゲームができるんだ!」と。
あの頃はまだ、コンピュータは巨大で、高価で、真面目な用途でしか使われないものだという捉えられ方だった。現在より「なんでもできる機械」と思われてた。
それが、ゲームになるなんて…
数年後、8bitのPCブームがやってくる。当時はPCでなく「マイコン」と呼ばれてた。
でも、当時のぼくには高価すぎるおもちゃだった。
昔のCMでいうところの「ショーウィンドーのトランペットを眺める少年」そのものだった。
ところが、近所に好意的なOAショールームの方がいて、商談の邪魔をしなければいくらでもPCをさわってもいいようにしてくれた。
ぼくは友人たちと一緒に、PCをいじりつつもプログラミングについて試行錯誤で学び始めた。ショールームの大人たちに迷惑にならないよう、気を遣った…
現在ぼくがプログラマの経歴を話すと「すごいですね、独学で学ぶなんて」と言われたりするけど、それは、たったひとつの不純な動機があったからにすぎない。
──ぼく自身で面白いゲームを作って遊びたい!
ぼくはプログラマである以前に、ゲーマーとして生まれたのだった。